旋回不安定擾乱の非定常構造やInlet Distortionに関する研究
航空機エンジンは燃費向上や環境配慮といったエネルギ有効利用の観点から、高効率化が求められています。
主要構成要素の一つである軸流圧縮機においては、小型軽量化のために段数を削減し、
一段あたりの翼負荷を増大させる必要があります。
しかし、高負荷状態の圧縮機では旋回失速やサージング、
翼列フラッタなどの非定常現象が発生しやすい不安定な運転状態となります。
これらの非定常現象は圧縮機の性能低下を招くだけではなく、
軸や翼列に多大な負荷を与え、振動の増大により破壊を引き起こす可能性も有します。
従って、軸流圧縮機の高負荷化には、
安定した運転状態を確保するために失速余裕の改善が急務となっています。
そこで、航空機エンジン用軸流圧縮機を研究対象とし、
旋回失速の原因として考えられている圧縮機内部での翼端からの漏れ渦、
二次流れ、圧縮機入口流れの非一様性(インレットディストーション)などの
現象について研究しています。
近年は、航空機エンジンの小型化のトレンドにより翼端隙間が相対的に大きくなることに
より生じる旋回不安定擾乱と呼ばれる現象の構造解明を行っています。

高速軸流型圧縮機
大軸班では現在,以下のテーマについて研究を進めています。
ⅰ)静翼形状の違いによる圧縮機の性能向上に関する研究
ⅱ)耐ディストーション性能に及ぼす前方スイープ動翼の効果に関する研究
ⅲ)数値解析を用いた動翼形状の違いによる圧縮機内部流れ構造の比較
iv)失速予兆現象である旋回不安定擾乱の構造解明


(左から)数値解析によるSweep動翼内部流れ構造の可視化(Design Point)、
数値解析によるSweep動翼内部流れ構造の可視化(Near Stall Point)

数値解析による旋回不安定擾乱発生時の動翼内部流れ構造の可視化
・主な研究発表
Kyonosuke Hamaguchi, Yuu Sakata, Nobumichi Fujisawa, Yutaka Ohta and Dai Kato,"Effect of Forward-Swept Rotor on Stall Margin in an Axial Flow Compressor at Distorted Inflow Condition",International Journal of Gas Turbine, Propulsion and Power Systems, October 2020, Volume 11, Number 4